大きな前歯が生えるとともに、あごも大きく育ちます。
歯並びの問題が明らかになりはじめる時期でもあります。
永久歯で、はじめて生えてくるのは下あごの6歳臼歯、あるいは下あごの前歯です。前回でもご紹介したとおり、永久歯の生え方は個人差が大きく、どちらが先に生えても心配はありません。
永久歯の中でも前歯は、萌出時期の分布幅が比較的少ない歯です。
先に下あごの真ん中の中切歯、そして1年ほどで隣に側切歯が生えます。前歯の仲間である犬歯はその次に生えることが多いのですが、側方歯群と呼ばれる第一小臼歯、第二小臼歯の萌出順序によっても順番が入れ替わる場合も多いです。
こうした永久歯の萌出とお子さんのあごの成長には、深い関係があります。乳歯の前歯とその隣の歯が永久歯の前歯へと生え変わる6歳前後は、小さな乳歯が大きな永久歯に生え変わったときにきれいに並ぶよう、あごの幅が急速に成長します。
そして前歯のところの幅は、永久歯に変わった後も大きく拡大してきます。
その際、上あごの中切歯や側切歯はお口の外側に向かって生え、下あごの前歯はあごの内側に向かって生えてうまくかみ合うのが本来です。
しかしこの頃、下あごが大きく成長し下の前歯が上の前歯よりも前に出ていたり、下顎が前に出て上と下の歯が合わさり受け口が目立ってくることがあります。
この頃から治療をすると改善しやすいので、矯正専門医に相談すると良いでしょう。
また、お子さんによっては、正中離開といって前歯の真ん中に隙間のある場合があります。
原因としては、上唇と歯ぐきをつなげている筋(上唇小帯)が強直して起きる、あるいは顎の骨の中に余分な歯ができている、遺伝、側切歯の先天的欠如、乳歯が自然に抜けずいつまでも残っている、口腔習癖、歯の形態異常などが考えられます。
学校の歯科健診で指摘を受けたり、保護者の方が気がついたときは歯科医院を受診しましょう。
乳歯が永久歯に生え変わるこの時期の、歯の萌出やあごの成長は、お子さんごとに多種多様で、その分不正咬合になる要因も多いのです。
これから13~14歳まで続く長い生え変わりの期間には、1本1本の歯の萌出だけでなく、お口全体の状態を模型やエックス線写真などにより注意深く観察し、歯の萌出やかみ合わせの推移などを予測しながら見守っていくことが大切です。
かかりつけ歯科医を持ち、お口の専門家としてお子さんの成長を一緒に見守ってもらい、気になることをそのつど相談できると安心ですね。
この時期の虫歯予防のポイント
前歯の萌出期間は、6歳臼歯とは異なり、完全に生え終わるまで通常1年はかかりません。
でも、6歳臼歯ほどではないのですが、萌出途中は食べかすが溜まりやすく、デコボコした歯ぐきが邪魔をして磨きにくいことがあり、虫歯になりやすい時期です。
無理して磨くと歯茎を傷つけて、ますます歯磨きがしにくくなることもありますので、毛の柔らかい小ぶりの歯ブラシで、特に注意深くプラークコントロールをしましょう。